昨年末に、稼働停止になった、兵庫県の朝来バイオマス発電所の新たな運駅先として、大東建託㈱が名乗りをあげた。林政ニュースによると、7月6日に、発電所とチップ工場の事業譲渡契約を締結して、来年度中の再稼働を目指すということだ。昨年末の稼働停止の際には、ずいぶんと心が痛んだが、外資ではなくて、まともな大手企業が引き受けてくれて良かったと思っている。
大東建託が出したプレスリリースをみると、同社は、「RE100」という、企業が事業活動で使う電力を100%再生可能エネルギーでまかなおうという、国際的な取り組みに加盟しているとのことだ。2019年から、太陽光発電やバイオマス発電で、すでに実践を始めており、2040年までに100%を目指している。朝来バイオマス発電の再稼働で、国内導入率が50%に達する見込みだということだ。RE100には、昨年末で390社、日本で75社が加盟している。いずれも名だたる大手企業ばかりである。大東建託の場合は、自社が発電する再生可能の電力で、2040年までに、自家用の電力を100%まかなうという目標を掲げていて、とても意欲的である。
私自身は、林業側の立場の人間であり、そういった国際的な取り組みなどには、全くの門外漢なので、山側にとって、持続的で安定的なCD材の供給先になってもらえたら、それは素晴らしいこと、是非、それを願いたい。林地残材も含めて、森づくりをしながら、バイオマス用の木材を搬出して、チップ工場に輸送するのには、人件費と機械経費を中心に、それなりのコストがかかる。そこに、林業事業体の管理費や利益が乗ってくると、一般企業からすると、「どうして、そんなに高い単価になるのだ」というような金額にもなる。これを、FIT制度の中で、何とか取引として成立させようとしたのだが、兵庫方式の場合は、既報のように、集材の不調が直接的な原因で、事業停止になってしまった。
それを、FITによる売電ではなくて、自家用の電力として使うという。要するに、売上がなくて、費用だけ出るという「投資行為」である。関西電力などの電力会社等からの電気も使わないということ、いってみれば、反FIT、反電力会社という方向性になるが、いずれにせよ、林業側の人間としては、「国内林業への貢献」というのであれば、林業側が、森林経営計画地等から、きちんとした手続きでもって、搬出してくるバイオマス用の木材や枝条などを、適正な価格で買い取っていっていただきたいと思っている。ついでにいうと、チップ工場と発電所については、地元での雇用を優先してほしい。あとは、山側も含めて、関係者の皆さんが、良好な関係を続け、気持ちよく、意義ある事業を続けていってほしいと願うしかない。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。