毎年、GW中はどこにも行かず、自宅で過ごすことにしているが、この期間に欠かさずやっていることがある。それは、映画鑑賞だが、「カサブランカ」という名画を少なくとも3回は観ることにしている。以前は、DVDで観ていたが、最近は、Amazon primeで、吹替版と字幕版があるので、吹替版を1回、字幕版を2回観る。吹替版は、臨場感が希薄で、やはり字幕版で観るのがベストだ。
カサブランカは、第二次世界大戦中、アメリカがドイツと闘っている最中の1942年に制作された映画で、ナチスドイツの支配下にあった、仏領のモロッコを舞台にしたものだ。ハンフリー・ボガード演じるリックが、夫と共に亡命してきたイングリッド・バーグマン演じるイルザを助け、アメリカに行かせる内容で、ストーリーは、至極単純なものだが、映画の中で、時々出てくる、ハンフリー・ボガードの「決め台詞」が格好良く、それを支持するファンが多い。
主人公のリックという人物は、映画の設定では、40歳手前だが、何とも言えない貫禄というか風格がある。そして、何よりもかつて自分が愛し、自分から逃げた女性を許し助ける、それも、大義のためにという「男気」に溢れている。ストーリーはシンプルだが、私にとっては、この30年ほど、この映画を何回も観て、その都度、自分の生き方というものを省みて、その後の生き方を考える、とてもいい「参考資料」だった。
是々非々という行動基準があって、リックは流れ着いたカサブランカで、人気店「リックスカフェ」を営みながら、そういう生き方をしている。しかし、一見冷徹で自分のことしか考えていないようで、実は人情に厚いという一面もある。資料をみると、ハンフリー・ボガードは、1899年生まれ、映画が制作された1942年の時点では43歳だった。そして、銀幕で活躍した後、1957年に57歳で亡くなっている。ちなみに、身長が175センチで、これだけが私と共通している。
カサブランカでのハンフリー・ボガードの所作を、後世の人々は「ダンディズムの極致」と評し、カサブランカは、彼の代表作となり、公開から80年経った今でも、多くの人に愛されている。自分のことだけを考えるのではなく、愛する人、そして、もっと広範な人々の幸福を願って行動する。そこに、我々は限りない憧憬を抱くのだろうと思う。つまり、ハンフリー・ボガード演じるリックは、我々にとっての「なりたい姿」であり、男の理想像なのだ。
とはいえ、我々には日々の生活があり、格好のいいことばかり言ってもいられない。そこには、現実という「重い軛」が横臥している。生きていくというのは、すなわち日々の葛藤との闘いであり、ともすれば、妥協と諦観の繰り返しである。私でいえば、映画「カサブランカ」を何度も観るという行為は、一種の儀式なのだと思っている。映画を観ながら、自分自身の現実を客観視して、ある時は懺悔をしたり、またある時は自身の行動の正しさを確認したりする。
この映画は、GW以外でも、折に触れて何度も観ることにしている。そのたびに、思うところもあり、新たな気づきもある。私にとって、カサブランカ、そしてハンフリー・ボガードは、雄弁な教師であり、優れたメンターでもあるのだ。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。