昨日、紀伊勝浦駅から名古屋駅経由で、茅野駅まで移動し、7時間余りかかって蓼科に戻ってきた。午前8時55分紀伊勝浦駅始発の南紀号に乗車したのだが、次の新宮駅で、60歳半ばくらいの夫婦と思しき 二人が乗ってきた。男性の方は、パッとみたところ65歳くらいで、女性の方は60歳くらい、直感的に、夫の方が定年退職になり、夫婦で旅行をしているのだろうと思った。男性は、みるからに真面目そうな、おそらくは、大阪あたりの企業に定年まで勤めて、雇用延長も終わって、人生の節目を迎えたという感じである。
その二人は、私の座席の斜め前に座り、男性はクリアシートに挟んだ、近畿地方の地図を拡大したものをみながら、夫人にしきりに話しかけていた。ふとみると、三重県の志摩半島のところに、三ヶ所くらい、マークをしてあった。ここからは、私が描いた、勝手なストーリーである。この夫婦は、前日、大阪を出て、那智勝浦町あたりで観光をして、新宮のホテルに泊った、そして、今日は、伊勢神宮などを回って、志摩半島のどこかのホテルか旅館に泊まるのだろう。その前に、昼食として「松阪牛」を食べるに違いない。そんな感じである。
長年の経験で、その人物を10分くらい観察すると、年齢もそうだが、だいたい、職業もある程度特定することができるというのが、ちょっとした特技である。男性は、その出で立ちや仕草、髪型などから、技術系だとみた。地図や時刻表などをコピーして、事前に旅行の計画をきちんと立てているところからも、真面目で実直な性格なのだろうと推し量った。奥さんもよく働きそうな感じで、おそらく、夫婦で共働きで、子供を育て上げ、夫が定年となったのを記念して、紀伊半島一周のような旅行を企画したに違いないと勝手に推測した。
やがて、松阪駅に着くと、私の予測はぴたりと当たり、二人は、リュックをそれぞれ背負って、降りていった。時刻は、11時半くらいで、これから昼食をとるのには絶好の時間だ。そして、松阪から鳥羽までは、近鉄特急で30分弱である。私が何故、彼らが松阪で降りるということを想定したのかというと、関西人であれば、三重県に行って、まず、何をしたいかというと、「松阪牛」のステーキや焼肉を食べたいというのが普通だからだ。私自身は、小学生・中学生の頃、松阪駅で「牛肉弁当」を買って汽車の中で食べるのが、至上の楽しみで、未だに、その味を忘れられずにいるくらいだ。
長年、真面目に勤め上げた自分自身に対して、褒美を設定し、それが、この夫婦の場合は、紀伊半島一周の旅行といったものだったのだろうと思う。勤め上げることは、大変立派なことだし、称賛に値することだと思う。私なんかは、サラリーマン生活を13年しかしていないので、なおさらそう感じるのだ。そして、定年後の人生を、心豊かに過ごしてほしいと思うのだ。それも、夫婦揃ってのことであれば、その人の人生は豊穣に帰すものとしていい。私自身も、現役引退後は、是非そうしたいと思っている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。