フォレスト・ミッションBLOG

林業の産業としての自立、そして林業に従事する人たちが誇りを持てるように、私たちは、自らが信じる、森林・林業のあるべき姿を、林業関係者の皆様と一緒に創造していきます。

未分類

我が国の森林・林業について①

投稿日:

 先週、岐阜出張中、全国紙の記者から電話があり、「我が国の森林・林業について取材をさせてほしい」とのことだった。翌日、電話で1時間ほど、やり取りをしたのだが、その記者は、このブログを読んで私のことを知ったらしい。「全国紙の新聞記者が、このブログを読んでいるのか」と認識を新たにした次第で、そういうことならば、もっと、森林・林業のことをこのブログに書いて、発信していくべきだと思った。それは、20年間に亘って、ずっと我が国の森林・林業をつぶさにみてきた人間として、また、我が国で、森林・林業だけに専門化した、経営コンサルタント(林業経営コンサルタント→自分自身でこの分野を開拓した)としての役割なのだ。

今朝、自宅近くで撮影

 これから、都度、我が国の森林・林業について、いろいろと語ってみようと思っている。さしづめ、「問わず語り」というところだ。ということで、最初に思い浮かんだのが、何故か、間伐等の補助金( 森林環境保全直接支援事業→いわゆる造林補助金)のことだった。これについては、忘れられないシーンがあって、今回は、そのことを語ってみようと思う。

 私は、1999年(平成11年)に、中小企業診断士の資格を取得し、登録した4月から、大阪を拠点に経営コンサルタントの活動を始めた。満41歳だった。それから6年ほど、全業種の中小企業を対象に、経営改善や創業、経営再生などのコンサルティングをした後、2005年(平成17年)から、森林・林業専門の経営コンサルタントとして、全国各地に赴き、林業事業体の経営支援や人材育成などに取り組み、現在に至っている。

 人材育成の活動で、森林施業プランナーの育成という中央の主要事業に、企画段階から関わり、全国講師として「コスト管理」などの研修講義を担当した。忘れられないシーンとは、その研修の中での一コマなのだ。私の講義をオブザーバーとして聴いていた、林野庁のベテラン職員が、受講者の質問に対して、講師の私を差し置いて突然立ち上がり、ホワイトボードに何やら板書をして、解説を始めたのだ。「いいですか! 補助金は足し算ではなく、引き算なのですよ。ここを間違ってはいけない」と大きな声で言った。

 彼が板書したのは、次のようなものだった。所有者返却金=木材売上‐(事業費‐補助金)、とても汚い字だったが、このベテラン職員の思いというものが伝わる板書だった。所有者返却金=木材売上‐(事業費‐補助金)

 この式が意味するところは、森林整備の補助金というものは、あくまで事業費を低減するためのもので、それ以上でも以下でもないということだ。あるいは、木材売上で事業費が賄えて、森林所有者に精算金が返せるのであれば、補助金は必要ないということになる。つまり、搬出間伐において、現状の木材価格では、事業費が常に木材売上を上回り、事業者は赤字、当然、森林所有者にお金を返せなくなるので、事業費そのものを低減して、所有者に返却できる収支になるように、造林補助金というものが存在するのだということになる。

 私も、その説明を横で聞いていて、「なるほど」と思った。林業のコスト管理では、計算上、補助金を収入と同等に扱っているのだが、正しい認識は、引き算でなければならない。補助をするお金なのだから、当たり前のことだ。それ以来、間伐などの補助金の説明をする時には、すべからく、「引き算」という考え方を強調するようにしている。その際には、必ずといっていいほど、あの時、怖い顔をして板書をした、林野庁ベテラン職員の顔が思い浮かぶのだ。

-未分類

関連記事

no image

若きチャレンジャーに幸あれ

 大手居酒屋チェーンのワタミグループの関連林業会社で、森林施業プランナーとして、大分県において森林整備や管理をしていた若者が、このたび、新会社を設立し、森林管理や整備専門の林業会社として活動を始めるこ …

森林所有者の無関心化には加速がかかっている→時間がない

 森林組合の経営診断などで、組合員のヒアリングをすることが多いが、そもそも、そういうところに出てくる人は、まだ、森林に対して関心を持っている方である。父親が植林をしたとか、自分自身も若い頃は、下刈りと …

今期の出張が終わる…新潟でとても嬉しかったこと

 木曜日の早朝、車を茅野駅に置き、あずさ号で東京、そこから、新幹線に乗り継ぎ新潟県の長岡に移動した。今年度最後の出張ということで、電車内において、今年度の出来事をいろいろと振り返りつつ、コロナ禍の中で …

長く続けることの意義とは

 昨日は、福島県の古殿町での、「新たな林業モデル実証事業」の現地検討会に参加した。皆伐再造林の効率・低コスト化、原木のトレサビリティ明確化による付加価値の向上などに取り組んでいる。事業の主体となってい …

春の到来、実りある1年にしたい

カラマツも芽吹き始めた…GWはグリーン一色に  自宅は、標高1,300mのところにあり、黄砂の影響もさほどなかったようで、その点は幸いだったと思っている。自宅の周りを少し散策した後、ふと、目の前のカラ …