静養中、you tubeで、いろいろと動画を見ることが多く、偶々、広島県の安芸高田市の石丸伸二市長の、議会での答弁や記者会見の様子をじっくりとみて、大変感銘を受けた。政治家は、その言葉で勝負する職業であることを地でいっている。40歳という若さながら、彼が発する言葉には、自身の理念や確信が込められていて、とてもインパクトがある。
彼の市長としての公約は、「政治再建」と「都市開発」「産業創出」の3つである。いわゆる河井事件による選挙違反で、前市長が退任した後を受けて市長に就任しただけに、政治再建は、彼の政策の一丁目一番地である。そして、所信表明の議会で、居眠りをしている議員を厳しく批判したことから、議会側との葛藤が始まった。直近では、市長が専決処分して、道の駅に無印良品を誘致しようとした事業を、議会が「二元代表制の崩壊」などという理由で否決した。
議会でのやり取りをみていると、一部の議員を除いて、特に古参議員の質問と石丸市長の答弁が全くといっていいほど、噛み合わず、市長がその「論理的話法」でもって、高齢の議員を論破しているように感じる。石丸市長は、データや数値を重視し、論拠や証拠、事実でもって、殆どペーパーを見ずに、論理的に答弁ややり取りをしている。一方の、古参議員の方は、用意した資料をみながら、データや論拠を明確に示さず、抽象的な質問ややり取りに終始し、要領を得ない。そこで、市長の口から「国語力がない」とか「意味不明である」とか、厳しい言葉が出ることになる。
また、石丸市長は、地元紙である中国新聞が偏向報道や印象操作をしているとして、当新聞からの取材を拒否、記事についても、抗議文を送ったりするなど、正面から、地元の新聞社とことを構えている。記者会見の席でも、担当記者に対して、本質を突いた質問を投げかけて、その記者は困惑気味に反論をするが、どうみても、石丸市長の言い分に理があり、おそらく、中国新聞側も相当な危機感を持っているに違いない。
政治再建は、議会側の反撃も続くことが想定され、まだまだ時間がかかるだろう。そこを突破しないと、都市開発も産業創出にも全面的に踏み出すことができない。市長を支持する若手の市会議員も、次の選挙でかなり出てくるものと思われる。確かに、議会での質疑応答が噛み合わないのは、世代間ギャップというものも見え隠れする。彼と世代や政治観の近い議員が過半数を超える(9人以上)になると、議会での執行側と議員側の議論が噛み合って、安芸高田市の経済振興や市民生活の向上などに資する政策が、その協働作業によって、創出され、生命力をもって執行されていくだろう。
たった、一人のリーダーが、組織を変革することができる、それは、企業や団体、そして行政機関も同じことだ。安芸高田市の市民は、非常に優れたリーダーを選んだと思う。彼は、2期目に都市開発や産業創出といった、本丸での闘いに本腰を入れてくるだろう。その取組や成果は、近隣の市町村にも波及し、広島県全体の底上げに繋がっていく可能性がある。この逸材を、遠くから期待感をもって見守っていきたいと思っている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。