報道によると、山梨県森林組合連合会が運営する共販所(木材市場)で、連合会自身の不正入札があり、会長以下の役員が管理監督責任をとって辞任、当該職員が停職などの懲戒処分となったということだ。明日から、山梨県内で仕事をすることになっており、嫌でもこの件に触れることになるだろう。入札者と開札者が同一人物で、その者が他の入札者が入れた金額をみて、それに上乗せをして落札したというのだから、開いた口が塞がらない。
これまで、各地の森林組合連合会や森林組合が運営する共販所を訪問し、話を聴いてきたが、入札を専ら担当する連合会が自ら「買い方」になって入札に参加するというようなケースはこれまで聞いたことがなかった。私が知らなかっただけかもしれない。但し、その場合は、開札する者と入札する者を明確に分けて、利害関係を一切排除しなければならない。その辺のところは一体どうなっていたのだろうか。
山梨での研修などの際は、山梨県森連の共販所の入札室を研修の会場としてよく使わせてもらっている。その際に、連合会の人たちと親しく話をしたりもする。年末に訪れた際には、いつも会場を気持ち良く貸してもらっているお礼にと持参していたギターで「あずさ2号」を弾き語りして、職員の人たちに喜んでもらったばかりだ。職場も和やかな雰囲気で、家族的経営という森林組合系統のいいところを実感していたばかりなのに・・・。
コンプライアンスの遵守などという、小難しい話ではない。ごく常識的に、社会通念上、おかしいということはやってはいけない。その人自身が、正しい、間違っていないということを、普通にやっていけばいいだけのことだ。森林組合の人たちは、日々、真面目に、正直に業務に臨んでいる。そのことは、この業界で外部の者として、おそらく最も森林組合のことを知悉している私自身が、よくわかっていることだ。その森林組合、連合会の強みの一つは「長年培ってきた社会的信用」ではなかったのか。
「正しいことを普通に実行していく」、間違ったことはやってはいけない。その上で、公的な補助金を活用して、林業を営んでゆく。そうして、真面目に頑張っている人たちを、誰も批判はしない。あり得ない不始末を、本当に稀にやってしまうことで、それまでに気の遠くなるような時間と労力を費やして築き上げた信用が地に堕ちてしまうのだ。山側に軸足を置く者として慚愧に堪えない。と同時に、そういうことを完全に撲滅するために、私自身の活動がまだまだ続くのだと心底思ったりするのだ。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。