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「傘がない」の時代を想う

投稿日:2023年4月21日 更新日:

 井上陽水の名曲である「傘がない」は、彼の2枚めのアルバムの中に収録されている曲で、1972年1月にリリースされた。この曲は、その時代の若者が熱を入れていた学生運動や政治問題、社会問題よりも、目の前にある「彼女に会いに行くことが最も大事」という、いわゆる「ノンポリ」の若者の価値観を曲にした、秀逸なフォークソングだと評価できる。新井将敬という団塊の世代の政治家の愛唱家だったということを、彼の評伝で読んだことがある。

2014年から愛用しているマーチンD-45

 この曲がラジオで流れた頃、私は中学3年生で、この2年前、中学1年の春に、吉田拓郎の影響を受けて、我流でギターを始めた。以来、53年間、ずっとギターの弾き語りを趣味としている。もちろん、井上陽水の傘がないもレパートリーの中に入っている。但し、この曲の歌詞には、中学生の頃から現在まで、共感したことはない。その理由は、自分自身、若い頃、女性を追いかけたことはもちろんあるが、政治や社会問題には、ずっと関心があった。世の中の現象や政治家の言動を是々非々で捉え、未熟者なりに自分の頭で峻別してきたという自負がある。

 そうはいいつつ、学生時代は、勉強などろくにせず、クラブ活動(同志社プロレス同盟を創設)とアルバイト、そして、当時の恋人との時間が殆どで、報道記者を志すようになった3回生くらいから、政治や経済などの問題に興味を持つようになった。そして、社会人になり、自身の知的未熟さや人生経験の少なさを実感しながら、給料の大半を本に注ぎ込んで読書に耽溺したり、尊敬する先達に教えを乞うたりするようになる。

 以上で、何を言いたいかというと、岸田総理に爆弾のようなものを投げつけた木村某のことである。世の中には、不文律というものがあり、実社会で生きていくには、それなりの手順というものが厳然と存在する。それは、学歴を重ねることではない。一流と云われる大学を出ていても、愚かな人間はたくさんいる。そうではなく、実社会で真面目に働いて、いろいろな人達から叱られたり、教えられたり、自ら学んだりしながら、自分なりの価値観・人生観・社会観といったものを培っていくのだ。

 木村某という人間は、24歳という年齢で、親元に厄介になり、定職にもつかず、おそらくはネット社会を彷徨ったのか。そして、何を考えたのか、「参議院議員に立候補する」などと妄想し、24歳では被選挙権がないことを「憲法違反」といって、神戸地裁に個人訴訟を起こしている。彼女がいて、真面目に仕事をしている人間に、そんなことをしようとする発想もないし、くだらないことを夢想している暇もない、そもそも、仕事で体力と気力を使い果たして、休日はぐったりと休んでいるのだ普通だろう。

 井上陽水が歌った、「傘がない」で登場する若者も、何らかの仕事に就き、恋人が出来て、結婚し、子供ができる。そうでなくても、社会人として活動していく間に、自分なりの価値観というものが形成され、世の中の現象を、自分なりの視点で捉えるようになっていったのだろう。大事なのは、そういう手順を踏んでいくことなのだ。それをせずに、未熟な頭で、政治や国のあり方を語ろうとすること自体が愚かすぎるし、とどのつまり、一部の愚かな連中のデマゴークに乗せられて、爆弾テロをやってしまうことになったのだと思う。世の中、誰が悪いとか言い募っても何が変わるわけではない。まずは、社会を構成する一員として、きちんと労働し、社会人としての要件を備えた上で、できるところから変えていくべく活動する、その大原則を、私も含めた大人達が、若い世代の人間に、自らの経験を踏まえて教えていく責任があるのだと思っている。

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