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西山太吉元毎日新聞記者の他界に思うこと

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 さる24日、毎日新聞元記者で、ジャーナリストの西山太吉氏が心不全のため死去した。享年91歳だった。西山氏は、佐藤栄作内閣の時、昭和47年に、沖縄返還を巡って日米間で密約があったとのスクープ記事をものにしたのだが、外務省の女性事務官からの機密漏洩だったとして、その後、その女性とともに逮捕、最高裁で有罪になった人物である。

 私も5年間だけだったが、近畿放送で報道記者の経験があり、報道記者になった1981年(昭和56年)当時、この事件はまだ生々しく、また、記者の大先輩としての西山太吉氏をいろいろな資料で調べ、この事件にも触れて、いろいろと考えるところがあった。私の年代の報道記者経験者で、西山事件や西山氏のことを知らない人間はまずいないだろう。

 作家の山崎豊子さんが、西山事件をモデルに書いた「運命の人」が、単行本として文藝春秋から発刊されたのが2009年、そして、2012年に映画化され話題になった。その本も読んだし映画も観た。報道記者だった頃の西山氏の印象は、「権力と闘う真のジャーナリスト」というもので、スクープをものにするという報道記者の「自己実現的な」行動に、一種の尊敬の念を抱いていたところもあった。実際に、自分自身が、それなりのスクープをものにした時には、快感のようなものがあった。まして、国家の機密事項を暴くというような「大スクープ」を手中にするというようなスケールの報道は、記者にとって「やり甲斐」そのものということが言うまでもないことだ。

 しかしながら、女性事務官との不倫関係は、当事者間の問題であり、双方に言い分があるにしても、社会党の国会議員に資料を渡し、政局の具にしてしまったことは、記者として明らかにやってはいけないこと。報道記者は活動家ではない。さらに、そこから情報源が特定され、記者の生命線である「情報源の秘匿」ができなかったことは、報道記者としての自殺行為に他ならない。33歳になって、近畿放送で2回めの報道記者として活動した時、私の考え方は、明らかに新人記者の頃とは違っており、西山氏のやったことは、ジャーナリストとしても人間として許されないと確信を持つに至った。もっというと、この人物は、その後も自らの過ちを棚に上げて、「無罪」を主張し続けた。私は、常に誰に対してもこう言っている。「この世の中で最も愚かな人間は、自分のことを愚かだと認められない者だ」自らの愚行を認めず、反省もしない人間ほど醜いものはない。

 一昨年の秋だったか、自室の蔵書を大量に処分した際、私は、西山太吉氏の著書である「沖縄密約」(岩波新書)や澤地久枝著「密約」(岩波書店)、先述の「運命の人」(文藝春秋)などの関連書籍を、10冊はあったと思うが、全て処分した。それは、若い頃に、一瞬だが、ジャーナリストの大先輩として尊敬の念を抱いた西山氏に対する永遠の訣別だった。人間、60歳を越えると(別に越えなくてもいいが)、自分が「この人は間違っている」という人間のことを認めることができなくなるものだ。他の人間が、その人物のことをどう評価しようが関知はしないが、これだけは譲れないという境界線をきちんと持っておきたいと常々思っているところだ。

 毎日新聞は、西山氏のスキャンダルによって、不買運動が起こり、事実上の「倒産」まで追い込まれた。西山氏が引き起こした事件の代償は余りにも大きかったと言わざるを得ない。いずれにせよ、西山氏の死去によって、また、昭和の出来事の一つが人々の脳裏から消えていくことになる。

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