私が住む長野県・蓼科の最寄り駅である、JR茅野駅は、昨年10月から、切符の窓口販売を廃止して、全て券売機で購入するようになった。コロナ禍で乗降客が減った事情はわかるが、あまりに極端な措置に正直驚いた。特急券などを購入するための券売機は3機あり、うち1機は音声案内付きになっている。蓼科という我が国有数のリゾート地の最寄りで、特急も停まる基幹的な駅なのに、窓口販売を廃止するのはいかがなものかと、個人的には大いなる疑問を持っていた。そして、「これは、高齢者を排除することになるだろう」と危惧していたのだ。
今週の日曜日、東京に行くため、茅野駅であずさ号に乗ろうと、改札口に差し掛かった時、80歳くらいの高齢者が、券売機の前で所在なさげに立ちすくんでいるところを見かけた。その様子を見て、「きっと、切符を買おうとしているのだが、券売機が使えず困っているのだろう」と思い、声をかけて手伝おうとしたのだが、いかんせん、あずさ号の発車時間が迫っていたので、そのまま、ホームに向かった。そして、ふと後ろを振り返った時、その老人が、改札口に来て駅員を呼び出して「切符を買いたいのですが…」と言う声が聞こえた。
その若い駅員は、にべもなく「チケットは全て券売機で購入していただくことになっています」と言うだけだった。そしてそう言われた老人は、どうしようもなく、項垂れるだけだった。私はそのまま、そこから立ち去ったので、その後どうなったのか確認できなかったのだが、流れとすれば、その若い駅員がアシストして、その老人が券売機で乗車券と特急券を購入したのだと思う。しかしながら、それをやっても、高齢者のストレスや屈辱感を拭い去ることにはならない。
結論から言うと、JR茅野駅での切符の窓口販売は、「優先販売窓口」として、復活するべきだと思っている。コロナ禍も一定収まって、春に向けてあずさ号の利用客も増えてくる。高齢者や障がいを持った人たちも、たくさんこの蓼科に来訪するだろう。そういう人たちを、JRの都合で排除していいわけはない。「和をもって尊しとする」というのが、日本人の美徳ではなかったのか。もう少し、高齢者などの「社会的弱者」に優しくなれないものか、JR各社には猛省と改善を要請したい。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。