フォレスト・ミッションBLOG

林業の産業としての自立、そして林業に従事する人たちが誇りを持てるように、私たちは、自らが信じる、森林・林業のあるべき姿を、林業関係者の皆様と一緒に創造していきます。

未分類

ウッドショックに思うこと①

投稿日:

 ウッドショックという言葉が、メディア等で飛び交っている。オイルショックやドルショックといった、○○ショックという列で、外的要因による木材価格の高騰現象に宛がわれている。目新しい言葉が好きなマスコミが飛びつきそうなキーワードである。さらに、コロナ禍が絡んでいるだけに、ニュースや記事にしやすい現象でもある。しかし、私なんかにすれば、「それがどうかしましたか?」という程度の受け止め方でしかない。

 どういう要因にしろ、経済の仕組みを少しでも知る者にとっては、製品を生産する場合、人件費や原材料費などの原価が上がり、それを内部努力で吸収できない場合、販売価格に転嫁せざるを得ないというのは普通のことである。その価格で、買い手が高いとして購入しないという意思決定をするのも当然のことだ。ウッドショック(基本的にこの言葉は嫌いだが)なる現象でいえば、専ら外材を原材料にして住宅を建て、販売してきたハウスメーカーや工務店は、外材の価格が今般の現象のように4倍とか5倍に、あるいは入ってこないという状況になると、経営体として生き残っていくために、代替策を講じていくか、この現象が収まって価格が採算ラインに戻るまで待つしかないだろう。

 要は、企業戦略・経営戦略の問題であって、それを、国産材の増産とか林業支援とか、そこに議論の方向を持ってくるのが間違いなのだ。山側からすると、「国産材の時代」という定義自体がおかしく、森林資源が国内にふんだんに賦存されていて、それを住宅や生活に利用するのは、ごく当たり前のことだからだ。さらにいうと、「外材依存」の仕組みを、買い手の都合ではなく、売り手(大手ハウスメーカーや商社など)の都合で創って、それをスタンダートにしてきたのが、我が国の木材利用の実態である。

 林業側の人達は、世の中の外的な現象に翻弄されて、酷い目に遭うことの怖さを本能的に知っている。だから、今回のウッドショックなる現象においても、自身の体力や適正な施業範囲を超えて、木材を伐り出すことはしないだろう。また、いつものように梯子を外されて、損害を被るのが目に見えているからだ。林野庁でさえも、国産材の大幅な増産は難しいとしているのだ。ただ、素材生産業者などで、この現象をビジネスチャンスと捉えて、自社の経営戦略と位置づけて、人材を確保し設備投資をして、立木買いなどでスギやヒノキの生産を大幅にしていくというところが出てくるのも当然のことといえる。彼らは、自己責任において企業経営をやっているのだから、それはそれでいいと思う。但し、森林組合は、その立ち位置や社会的使命等から、その方向性は限定的になる。

 林業の本分は、「森林を育て守ること」であり、生産される木材は、その副産物である。人工林は、収穫=収益を目的としたものではあるが、植林からの生産から搬出間伐・皆伐までの計画的生産であり、瞬間的で急激な需要増には対応できない。おのずと、適正範囲の施業量に同軌する生産量が存在する。その計画的生産に資するため、また、森林を育て守るという公益性のために、いろいろな補助金が存在するだと理解すべきだろう。勿論、補助金のあり方には議論があってしかるべきだ。

 林業側は、どういった場合にも、普通にやるべきことをやる、その上で、社会の動静に適合すべく、たゆまぬ改善に取り組む、目先の現象に翻弄されてはならないのだと、これからもブレずに発信していきたいと思っている。

-未分類

関連記事

現実社会から退場すべき者達

 反捕鯨団体「シーシェパード」の創設者で、我が国が国際手配していた、ポール・ワトソン容疑者(73)が、デンマーク領グリーンランドで逮捕された。ウキペディアによると、この男は、カナダ生まれで、元々、航海 …

良き人材を育てる

 先週は、水曜日から金曜日まで、鳥取県のプランナー2次研修だった。1次試験を合格した14名の受講者が倉吉市内の会場に集い、3日間みっちりと、実践的な研修に臨んだ。運営を請け負うチーム・フォレストミッシ …

スキーはできないけれど

 私が住む、東急リゾートタウン蓼科には、スキー場があって、例年この時季(金・土・日・休日に営業)は、家族連れやカップルなどで賑わっている。こぢんまりしたスキー場だが、別荘地内にあるということで、立地条 …

我が国の森林・林業について①

 先週、岐阜出張中、全国紙の記者から電話があり、「我が国の森林・林業について取材をさせてほしい」とのことだった。翌日、電話で1時間ほど、やり取りをしたのだが、その記者は、このブログを読んで私のことを知 …

バブル期は遥か昔の幻想か

 新幹線や飛行機での移動中に読もうと思い、先日、桐野夏生著の「真珠とダイヤモンド」(毎日新聞出版刊)という上下本を購入した。バブル期の証券会社を舞台に、バブル経済に狂奔した時代とそれに翻弄された若者の …