2月もあと2日になった。外気温は、氷点下6度で、この辺りの寒さも緩んできた感がある。伊勢正三の名曲中の名曲、「なごり雪」メロディが自然と浮かんでくる季節になった。「春がきてきみはきれいになった。去年よりずっときれいになった」というフレーズは、極めて秀逸である。伊勢正三氏は、昭和26年(1951年)の早生まれで、私よりも7歳年長だから、74歳で、いまだに現役、精力的にコンサート活動をしている。なごり雪は、かぐや姫時代の1974年3月にリリースしていて、その時、彼は23歳という若さである。その年齢で、よくあんなに深い詞が書けたものだと感心する。

この曲は、1976年にイルカという女性シンガーがカバーして大ヒットした。元々は、別れのシーンに際して、男性の心理を描いた曲だったが、イルカという人がボーイッシュな感じだったので、曲と歌い手が何とも言えず調和した、絶妙の名曲となったのだ。伊勢正三氏が作詞作曲し、イルカさんが歌った名曲は、他にも「雨の物語」「海岸通り」「あの頃のぼくは」などあって、どの曲も詞が聴く者の「まぶたのスクリーン」に再現される、味わい深いものばかりだ。個人的には、伊勢正三さんの曲の中で一番好きなのは、「22歳の別れ」で、その次に好きなのは「あの頃のぼくは」である。
この季節になって、ギターの弾き語りでよく歌うのは、当然、「なごり雪」だが、松任谷由実さんの「卒業写真」も定番である。「あの頃の生き方をあなたは忘れないで・・・」というフレーズは、世代を越えて「ブレない生き方を志向する」不器用な男どもへのユーミンからの「激励の辞」そのもので、このフレーズに救われたり、背中を押された同世代の人間はもの凄く多いだろうと思う。それから、ハイファイセットの「グッバイ・スクールデイズ」という曲は、1996年のリリースということだが、卒業というキーワードで寂しさと希望が交錯する想いを表現した秀作だ。
ちなみに、ハイファイセットのボーカルだった、山本潤子さんは、2014年5月の公演を最後に無期限休業に入っていて、その透き通るような声をライブで聴くことができなくなっている。彼女が歌った、「卒業写真」は、音楽評論家の富澤一誠さんが名付けた「ニュースタンダード」として、永遠に存在し続ける名曲中の名曲だと云える。それから、隠れた春の名曲として、小椋佳さんの「心の襞(ヒダ)」を挙げたい。春の日の別れを描いた曲で、個人的にも思い入れのあって、この時季には必ず何度も聴くようにしている。

株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。