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キャッチボールへの憧憬

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キャッチボール用に揃えたグローブ

 連休前のある日、ふとキャッチボールがしたくなり、40数年ぶりに野球のグローブを手に持った。中学・高校の頃、幼馴染たちと野球のチームを結成して、草野球ではあるが、真剣に野球に打ち込んだ時期があった。私は、右投げ・左打ちでファーストの守備をしていた。大学に入学して直ぐに、同じ下宿の先輩に誘われて、準硬式野球同好会に入った。しかしながら、軟式野球しかしたことのない私は、遠投の練習で肩を傷めてしまい、長続きしなかった。その後、いくつかのクラブを渡り歩いた後、2回生の時に、親友の千政和君(故人)と一緒に、念願だった学生プロレスの団体(同志社プロレス同盟)を立ち上げた。

 それ以来、私は、それなりに好きだった野球からは縁遠くなってしまった。プロ野球中継をテレビでみることもなくなり、社会人になってからは、スポーツといえば「ゴルフ」というパターンになった。野球とゴルフのスウィングは、「似て非なるもの」で、野球をやっていたから、ゴルフが上手いという訳でもない。全く別物として取り組むのがベターだと思っている。それで、40数年間、野球とは縁遠くなっていたのだが、先述のように、ふと、キャッチボールがしたくなったというわけである。

 それは、多分に父と子が、キャッチボールをしてコミュニケーションを図るという行動に自分自身が憧れていたということに起因する。私の息子は、27歳、社会人になって6年目だが、都内の企業で専門職として懸命に働いている。年に3回程度会って、食事をしながらいろいろと話をするのだが、どうやら、彼といつかキャッチボールをしたいと、心の奥底で願望していたようだ。自分が生きているうちに、まず、元気なうちに、ボールを投げて受けて、その後、珈琲でも飲みながらいろいろな話をする時間は、自分にとって珠玉のものになるだろう。

 昨日、入会しているゴルフクラブのキャディマスターをしているN君に連絡して、彼の仕事が終わった夕方、10分だけ、キャッチボールの相手をしてもらった。彼は、29歳で、私の息子より1歳だけ年長、高校球児だったということを聞いていたので、「予行演習」ということで、付き合ってもらった。私が、「これ、やらないか」とグローブを彼に投げ渡すと、彼は、少し嬉しそうな顔をして、キャッチボールに付き合ってくれた。私もかつて、ピッチャーをしたこともあったので、硬球とはいえ、それなりの球は投げることができる。彼も、私の胸元に向かっていいボールを返してくれた。

 少しだけ、「息子とキャッチボールをしているような」気分になり、彼に付き合ってくれたお礼をいって、ボールの感触が残る手で、車を運転して帰宅した。キャッチボールなど、単調でつまらないものだと思ったこともあったが、実際、この歳になってやってみると、実に奥深い、そして味わい深いものだと再認識した。まさに、コミュニケーションそのものの行動であり、相手のことを考えながら、自分の気持ちを込めて、投げたり受けたりする。いつか、実の息子と、心ゆくまで、キャッチボールをしてみたいと思ったのだ。

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