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「暗殺が成功して良かった」発言についての見解 その1

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 もう1ヶ月近く前のことになるが、その発言が飛び出したのは、4月14日、岸田首相が、遊説先の和歌山市内で、爆弾テロに遭う前日のことだった。作家で、法政大学教授の島田雅彦氏が、自身のネット番組の中で、こんな発言をした。
「こんなことを言うと、また顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないけど、今まで何ら一矢報いることができなかったリベラル市民として言えばね、せめて『暗殺が成功して良かったな』と。まあそれしか言えない 」ちょうど、選挙中ということもあり、立憲民主党の推薦で、安倍元首相の選挙区で立候補した有田芳生氏を支持する立場での発言だと推察できる。

 選挙において、どういう候補者、あるいは政党を支持しようと、その人の自由であり、それをとやかくいう権利は何人にもない。また、小説家がどういうテーマで、どういったフィクションを書こうとも、例え、彼の近刊「パンとサーカス」のように、首相暗殺をテーマにしたものだとしても、それは表現の自由であり、こちらは、気に入らなければ、その本を読まなければいいだけの話である。そうではなくて、炎上し、問題になっているのは、「暗殺が成功して良かったな」という発言である。思ったとしても、言ってはいけないことがある。彼の発言は、明らかに「矩をこえている」というしかない。後から、謝罪しても、弁明をしても、全く許されることのない、断罪されるべき暴言である。

文藝春秋2023年2月号の記事

 島田雅彦氏が、月刊文藝春秋の2月号(創刊100周年)に、「炎上が怖くて小説が書けるか」というタイトルの論考を書いている。その中で、昨年刊行した自著の宣伝を兼ねたネットメディアへの記事として、以下の文言を書いている。「殺された安倍元首相は顕彰すべき功績などほとんどなく、無駄に最長在任記録を作っただけで、その間に民主主義と経済を破壊した」、本人によると、「この一節がいわゆる『ネトウヨ』の人たちを刺激したのだと思います」とのことだった。

 要するに、安倍元首相を全否定している文言なのだが、この文章は、大学教授を務める人物とは到底思えないほど、知性とか見識を感じない。まず、「顕彰すべき功績などほとんどなく」とあるが、一体に何を根拠にそんなことが言えるのか。しかし、それは、彼の穿った主観だということで、ギリギリ看過するにしても、「無駄に最長在任記録を作っただけで、その間に民主主義と経済を破壊した」というのは、完全に自己撞着した文言だ。つまり、安倍内閣が、憲政史上最長となったのは、6回の国政選挙で勝利したからこそであり、そこには国民の審判があって、それがすなわち民主主義の証に他ならない。民主主義に基づいて、国民から信任され、長期政権となったのだ。失政や悪政続きであったのならば、2009年から2012年までの民主党政権のように短命で終わることになるはずだ。

 それに、経済を破壊したとあるが、安倍政権下のいわゆるアベノミクスで、その恩恵を受けたのは、主に大企業だったとしても、その企業の下請けや取引をすることで、中小企業も潤い、消費が拡大することによって、内需も押し上げられた。私の周りでも、「アベノミクスは、企業や国民にとっていいことだった」と評価する人間は多い。もちろん、格差社会の問題など、課題もあるが、私も含めて、多くの人たちが前向きな評価をしている。「経済を破壊した」とは、具体的に何をもってそう断言するのか。きちんと、エビデンスを示すべきだろう。

 この問題を、大手メディアは、産経新聞以外一切報じなかった。夕刊フジが質問状を送り、彼が出した返信を全文掲載し、事実上、謝罪になっていなかったので、また炎上することになった。常々思っているから、口に出てしまうわけで、これは確信犯的発言とみるのが妥当なところだ。反省しないのであれば、島田氏のやるべきことは、まず、法政大学を辞し、彼が文藝春秋に書いているように「炎上が怖くて小説が書けるか」という通り、小説家としての執筆活動に専念することに尽きると思う。

 

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