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林業の産業としての自立、そして林業に従事する人たちが誇りを持てるように、私たちは、自らが信じる、森林・林業のあるべき姿を、林業関係者の皆様と一緒に創造していきます。

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プロフェッショナルの矜持

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 林野庁事業で、林業機械化協会が実施団体となっている「新しい林業経営モデル実証事業」の委員として、全国11地区で取り組んでいる、先進的な事例を視察する機会が多くなり、一昨日は、和歌山県・新宮市でのタワーヤーダの取り組み(架線計画の高度化等)をみにいった。私は、18歳まで和歌山県・那智勝浦町で育ち、隣町の新宮高校に通った。那智勝浦町にある実家には、年3回程度いき、数日滞在している。

トラック搭載型タワーヤーダ

 この日は、新宮市内にある、「前田商行」の事業地で、タワーヤーダ集材をしている現場を視察したが、集材作業の前工程である、「索張り」や「搬器の設営」などの作業をみせてもらった。このトラック搭載型タワーヤーダはわが国に1基しかなく、前田商行はそれをもう10年も使いこなしている。一連の手慣れた作業をみていて、「これは、プロフェッショナルの仕事」だと実感し、紀南地方の山奥で、こういった高度な作業システムの林業機械を使いこなしている現場技能者の人たちをレスペクトする気持ちで一杯になった。

 林業は、50年・80年サイクルの事業であり、それを遂行するのが林業事業体=プロフェッショナル集団である。いずれも、長い年月で培われるもの、人間が営々と構築していくものである。長続きするためには、その組織なり構成員がそこで腰を据えて仕事に取り組むための条件が必要になる。当然、生活をしていくための給料や賞与、安全に作業をするための労働環境やルール、相互の人間関係等々、いろいろなものが重要になる。

 さらにいうと、「林業に携わっているという誇り=プライド」が極めて大事なのではないかと、最近、つくづく感じているところで、優れたリーダーのもと、そういう技術者たちが、チームで有機的に動く組織こそが、最強の林業事業体であると云える。給料も重要だが、それが全てではなく、「誰にもできないことを自分たちはやっている」といった自我が、林業者としての誇りになる。誰でもできることをやるのであれば、林業を生涯の職業とする必要はなく、もっと安全で報酬の多い職業はいくらでもある。

 一つのことを長くやり続けることは、とても重要だ。いわゆる「スペシャリスト」へのプロセスになるのだが、とにかく「続けること=継続」こそが、プロフェッショナルを創造していく。「努力し続けることがすでに才能」とは、私が尊敬する音楽評論家の冨澤一誠さんの座右の銘である。私自身も、この言葉を肝に銘じて、今日まで活動を続けてきた。気がつけば、森林・林業に関わって20年の歳月が流れた。但し、まだまだ志半ばである。

 プロフェッショナルを育成・輩出し、その業界を振興させていくこと、いわゆる人材育成であるが、この取り組みの手を緩めてはならない。林業界も例外ではない。私も微力ながら、その一翼を担っている。大きな夢と使命感を持ち、林業界で奮闘する若い世代の人たちを支援、また、一緒にこの業種を盛り上げていくことに、残りのビジネス人生を費やすという明確な一里塚を設定しているところ。私の活動は、地中に根を張る樹木のごとく、あくまで地道に、そして営々と、ただしかし、確実な実りを企図して、前に進んでいく。私なりのプロフェッショナルを意識して…。

 

 

 

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