大手居酒屋チェーンのワタミグループの関連林業会社で、森林施業プランナーとして、大分県において森林整備や管理をしていた若者が、このたび、新会社を設立し、森林管理や整備専門の林業会社として活動を始めることになったという連絡があった。彼、佐藤伸幸さん(35歳)というが、この夏、彼から連絡があり、東京・銀座で会って5時間ばかり話をした。その際、彼はワタミグループを退職して、独立するということで、その方向性も含めて、私の方からいろいろと助言をした。
彼とは、今から5年前、京都・日吉町森林組合での「森林施業プランナー研修」で知り合った。大手の居酒屋チェーンを運営する会社の社内ベンチャーを自ら提案して、大分県・臼杵市役所に林務職員として出向し、その後、林業事業体の責任者として活動した。全くの一から始めて、これまでに私有林約400haを集約化し、森林経営計画を策定の上、直近では1万m3の木材生産をするまでになったということだ。
彼が設立した会社は、合同会社フォレストマネジメントといって、本社は横浜にある。大分での事業も引き続き取り組んでいくようだが、活動領域は全国各地だということだ。彼から送ってきたメールには、事業目的として、以下のものが掲げられている。
【事業目的】 (1) 森林の管理業務
(2) 森林経営計画、森林整備、森林作業道の立案、実施及び受託
(3) 森林の測量・調査・評価業
(4) 山林、立木、原木の売買事業
(5) 育林業、造林業、素材生産業
(6) 木材及び木質燃料の流通・加工・利用業
(7) 林業用種苗生産・配布業
(8) 講演会・各種セミナーによる情報提供業務、各種研修
(9) 森林組合の監査業務
(10) 前各号に関するコンサルティング業
(11) 前各号に附帯又は関連する一切の事業
先日、東京で会っていろいろな話をしたが、単なる金儲けを企図するわけではなく、我が国の森林・林業を、自らの手で改革しようという、高い志を持った若者だと直感した。私が長年関わっている、森林施業プランナー育成事業で育成したプランナーの中から、こういった人材が出てきたことを、正直とても嬉しく思っている。東京での面談の後、私は彼にメールで下記のようなアドバイスをした。
佐藤伸幸様
坪野です
先週は、久しぶりに再会でき、また、貴君の前向きな話を聞くことができ有意義でした。是非、頑張ってください。また、折に触れ、連絡ください。私の助言や存在が何かの役に立つ場面もあろうかと思います。とにかく、民間企業の経営は「食うか、食われるか」です。そして、いいパートナーを得て、その人との信頼関係を深めながら、良質の仕事を積み重ねていくことです。健闘を祈っています。
若きチャレンジャー、改革者に幸あれと言いたい。森林施業プランナーとして、森林組合や民間事業体に所属して、その地域で懸命に集約化や地域森林管理に取り組むことはとても重要だ。それが地域における林業を再生させ、振興させていくための原動力となる。そして、それと併行して、彼のように、自らリスクをとって、フリーの林業事業体として、あるいは森林所有者に対する支援者として、地域を超えて活動していく人材の存在も貴重だ。
私自身、「おれが、おれが・・・」という年齢はもう過ぎた。ある意味、林業界における指導的な存在として、彼のような人材をインキュベートしていく役割を担っていると自覚している。その嚆矢になる各種の研修も貴重な機会である。多様な人材が、相互に連携しながら活動していく、そのことによって、我が国の森林・林業の再生や振興が前に進むのだ。私もまだ老兵ではなく、彼らと一緒に、意義ある仕事をしていきたいと思っている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。