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ささやかな我が書庫から その1

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 気に入った本を次から次に買って、本棚に収納し、気の向くままに読みたい本を取り出して読書に耽る。そんな営みの始まりはいつだったのか、よく考えると、大学2回生の時、同じ学部学科で、同級で親しくしていた、伊住(千)政和と一緒に、京都・三条にあった、「駸々堂」に行った時のこと。私は貧乏学生で、高価な本を買う余裕などなかったのだが、彼が「ちょっと読みたい本があるので付き合えや」と言って、当時、京都市内では最大規模だった「駸々堂」に連れ立って出かけたのだ。そして、その際、彼は「株式投資」の本を10冊くらい、まとめて買った。私と云えば、文庫本を1冊だけ買ったように記憶している。

 それ以来、私はアルバイトで少しお金が入るごとに、駸々堂や同志社大学の生協の書店に行き、歴史や政治経済、イデオロギーなど、いろいろなジャンルの本を買い、狭いアパートの部屋に設置した粗末な本棚に収納していった。大学を卒業し近畿放送に入社してからは、給料が入るたびに、それまで物色していた本を大量に買って、休日などにそれらを読み耽るという日々が続き、いつの間にか、本棚は大型化し、蔵書は幾何級数的に増えていったのだ。

書庫を整理した際、目についた蔵書から

 今日は午後から衣替えを兼ねて、自室の整理をしたのだが、その際、6畳間の本当に狭い自室内に所狭しと並んでいる本棚にも触手を伸ばし、いわゆる棚卸しをした。その際、目についた蔵書が写真の2冊である。向かって左側が、「失速 ガロが燃え尽きた日」(富澤一誠著 1980年立風書房刊)で、右側が、「大国政治の悲劇」(ジョン・J・ミアシャイマー著 2022年 五月書房新社刊)である。今回は、「失速」にまつわる話を開陳しようと思う。

 1980年といえば、私が大学3回生の年である。この本は、当時、新進気鋭の音楽評論家として売り出し中の、富澤一誠氏が、人気グループだった「ガロ」のメンバーに取材をして、彼らがいかにしてスターダムに登り詰め、そして失速したかという「事実」を克明にレポートした力作である。ガロについては、「学生街の喫茶店」という曲が大ヒットし、その繊細な音楽性が高く評価され、1970年から1976年まで活動した3人のグループで、私なども大ファンというほどではなかったが、レコードなどを買って聴いたものだ。

 この本を読んだのが大学時代だったのだが、それから何度かこの本を読み返しつつ、6年ほど経って、近畿放送の東京支社に勤務した際、私は著者である、富澤一誠氏に出版社経由で長い手紙を書いた。そうすると、富澤一誠氏本人から、ほどなく電話がかかってきて、「手紙をもらった富澤です。僕の本を読んでくれて御礼をいいます。ついては、食事でもしませんか?」ということだった。そして、六本木で富澤一誠さんと初めてお目にかかり、フォークソングやニューミュージックについて、いろいろと話をさせていただき、その交流が40年経った今でも続いている。

 私にとっては、富澤一誠さんは、音楽評論家としては勿論、一人の人間として尊敬する人であり、これまで、多くのことを学ばせていただいた恩人でもある。そして、そのご縁のきっかけとなったのが、彼の著書「失速」なのだ。前にも書いたが、一誠さんの座右の銘は、「努力し続けること自体がすでに才能」ということで、一つのことを長く続けることの意義、価値を、私自身、いまの仕事に向き合う中で痛感し、そのたびに、一誠さんのこの言葉を噛みしめている。一冊の本から導かれた出会いと交流が、私の人生においてかけがえのないものをもたらしてくれた・・・本と読書に心から感謝したいと思っている。

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