私は、農業の専門家ではなく、林業それもそれを担う林業事業体における経営支援の専門家である。従って、農業そのものについての知見を持たず、いうなれば、ただの素人である。従って、生産や流通に亘る細部について言及することもできないし、一消費者として語るしかないというのが正直なところだ。今般の米の価格高騰についても、あくまで、一消費者、あるいはこの国の国民として事象を見据えるしかないと思っている。

しかしながら、林業における商慣習と実勢価格等を鑑みる時、おのずと米の小売り価格の適正値が朧気にみえてくる。林業経営コンサルタントとしての「私見」に過ぎないが、これを試算してみようと思う。まず、出荷価格であるが実際にJAに出荷する際の金額で、知り合いから新米を譲ってもらっていて、この価格が、精米で3,000円/10キロである。そこから、近場のJAまで輸送するコストが、3,000円/トンとして、10キロだと30円である。積み下ろしのコストを10円みても40円程度であろう。従って、JA着単価は3,040円となる。
JA におけるマージンであるが、倉庫の保管料・卸売り業者への輸送量を含めて買い上げ額の40%と仮置きする。そうすると、3,040円×0.4に選別・保管・輸送量を200円と設定、農協からの出荷額は、4,456円/10キロとなる。次に、卸売り業者であるが、このマージンが卸売業ではかなり高めだが、小売店への輸送量を含めて10%と設定すると、これが、4,456円×0.10=446円 小売店のマージンが20%として981円、従って、消費者が購入する価格は、(4,456+446)+981=5,883円/10キロとなる。5キロだと2,940円程度である。
林業の場合、スギでいうと、主伐と搬出間伐半々として、生産コストが6,000円/m3程度、木材市場での販売価格はだいたいその倍の12,000円くらいである。これを米と単純には比較できないが、米についても、精米した時点でほぼ商品となるので、生産金額の倍程度の価格が商品の適正価格ではなるのではないかと想定している。それに、上記の試算で、JAの40%(仕入れ額に対してだが)、卸売業の10%もやや高いような気がする。生産時の買取金額をもっと上げて農家の手取りを増やし、中間コストをカットすべきという論調も何となくわかるような気がする。生産側に6割返したら、農家の手取りは3,600円/10キロになり、現行よりも600円増えるのだ。
私なりに、流通過程での適正マージンというものを踏まえつつ、最終消費価格を試算してみたが、5キロで3,000円手前という金額が適当であろうという見解になった。一生懸命、米を生産している農家の皆さんには、その苦労や努力が報われる買い上げ額が必須だろう。これはもっと上げるべきだと思うが、流通側に利益が偏るのは経済合理性に欠ける部分がある。小泉進次郎農林水産大臣が、来月初めにも小売り価格を「2,000円台に持っていく」と公言しているが、政府備蓄米の放出であれば、十分に可能であろうと思う。米については、生産・流通過程で、さまざまな課題があるが、それらについては、また、別途、私見を述べたいと思っている。

株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで470超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。