静岡県の川勝平太知事は、2009年に当選して以来、4期連続で知事に就任、その間、特に、リニア関係の問題発言で、世間を騒がせてきた。御殿場を揶揄した「コシヒカリ発言」、菅前首相を皮肉った「学歴発言」等々、あんなことを、わざわざ、どうして発言するのか、そのたびに、理解に苦しんだのだが、今回の、職業差別と指摘されている発言は、誰が聞いても完全にアウトである。
県庁に入庁し、本庁勤務となった新入職員に対する訓示の中で、彼はこう言ったのだ。「 そしてですね、そのためにはですね、やっぱり勉強しなくちゃいけません。実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要がありますね。」この中の、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。」という発言が炎上の対象となった。
川勝知事の、この訓示を文字起こしした全文を読んだが、その内容は既存の情報を適当につなぎ合わせたもので、「おれはものを知っているだろう」といわんばかりのものだが、新入職員には、それなりのものなのだろう。しかしながら、それをメディアで報道されると、ことの様相が激変するのだ。彼は、記者に対して「切り取りをされた」と強がったが、切り取りであろうとなかろうと、野菜を売ったり(八百屋のこと)、牛の世話をしたり(酪農・畜産業のこと)、モノを作ったり(製造業のこと)とは違って、県庁のそれも本庁採用の職員が「頭脳・知性の高い方たち」と公式の場で言い放ったことで、この御仁は、完全にアウトである。話にならない。
昨日、林業事業体の経営者が、「川勝知事の発言は、一次産業に対する差別だが、林業という名前が出てこないのは、その他ということで、余計に腹が立つ」と言っていた。静岡県の統計によると、令和2年度、木材生産量が42万m3で、全国19位、製材工場数は、岐阜県・三重県・北海道に次いで、156工場と全国4位につけている。川勝知事に無視されるような規模ではない。それに、天竜地域などは、林業の由緒ある名門地域である。
翌日の記者会見で、彼は「一次産業は大事であり、職業に貴賤はない」などと弁明したが、言ってしまった言葉は元には戻らない。普段、そう思っているから、あんな発言が出たのだ。現時点では、6月の議会まで居座るつもりのようだが、静岡県民の多くの人たちは、「一日も早く辞めてもらいたい」という気持ちだろう。学者馬鹿というか、どうしようもない御仁である。静岡県民も、こんな人物をよくも三選したものだと思う。リニアの問題は、別の意味でも悪質で、「万死に値する行為」だが、もう顔も見たくないという人が圧倒的に多いのではないか。県のトップにとんでもない人間がいたものだと改めて驚いている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。