1973年12月11日リリースというから、この曲が世に出て、丸50年ということになる。小坂明子さんの「あなた」という名曲である。当時、私は16歳で高校1年だった。たしか、ヤマハのポピュラーソングコンテスト(通称ポプコン)から出てきたシンガーソングライターだったと思うが、その「あなた」が200万枚を超える大ヒットとなり、彼女は一躍、スターとなった。私と同年齢、デビュー当時16歳というから驚きである。
小坂明子の曲では、「あなた」もいいが、これの次に出した「もう一度」という曲が好きである。「あなた」も「もう一度」も別れの曲であり、後者は、恋人が死んでしまった後の喪失感や哀しみを歌った詞で、別れの曲をこよなく愛する自分としては、直球ストライクの秀逸な曲になっている。昨日、アマゾンプライムミュージックで、彼女が2013年に出した「懐想」というアルバムを購入し、その中にあった「あなた」と「もう一度」を聴いてみた。
ピアノの弾き語りで、40年前よりもスローなテンポで、それが、時間の経過を聴くものに感じさせる。キーも少し下がり、この当時で56歳の年齢なりの落ち着きのあるバラードに仕上がっている。50年前の彼女は、自ら作詞・作曲した大人びた曲を、若さに任せて、 全力で表現していたが、40年後の彼女は、肩の力が抜けて、ごく自然に言葉を紡いでいるようだった。特に、「もう一度」は、やはり秀逸で、曲を聴きながら、いろいろなことを想起してしまった。
私自身も、最近、特に肩の力が抜けてきたような気がする。仕事もそうだし、ゴルフも、そしてギターの弾き語りも、衒いがなく、ごく自然に振る舞えるようになってきた。これが歳を取るということなのか、まだまだ、無我の境地までには至らないが、若い頃の力みとか背伸びとか、構えとか、そういうものが殆どなくなって、日々の物事に対して正対し、自分の考え方、行動で適宜対応できるようにはなった。
50歳代の前半くらいまでは、「是々非々」という言葉が好きで、30歳代後半から40歳代前半にかけては、「妥協しない」という考え方が好きだった。しかし、そういったものは、年齢や経験とともに内面に入り込み、表には出なくなった。そして、今まさに手にしたものが「肩の力を抜く」という行動基準である。肩の力が抜けると、顔つきまで柔和なものになる。昔、脚本家の藤本義一氏が「男の顔は領収書」という本を書いたが、言い得て妙なところだといまだに感心する。この先、暫くは、いや、もっと進化しながら、「肩の力抜が抜けた」生き方をしていきたいと思っている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。