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岸田総理襲撃事件で考えたこと

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 土曜日の昼前、仕事関係の資料を作成中、突然飛び込んできたニュースに驚きを禁じ得なかった。昨年7月8日、忘れもしない、安倍元総理の暗殺事件が奈良市内で起こり、今度は、隣県の和歌山市で、現職の総理が狙われた。木村某という24歳の男が、和歌山市の雑賀崎で衆議院補選の応援演説をしようとした岸田総理に、筒状の爆弾のようなものを投げつけ、現場で取り押さえられたのだ。

 各マスコミは、早速、木村某の家族関係や最近の行動などを報道し、殆どが、山上被告の模倣犯、あるいは、「 ローンオフェンダー(単独の攻撃者) 」として、木村を評している。彼が、まだ黙秘中で、何も語っていない段階で、そう決めつけるエビデンスや根拠がどこにあるのか、甚だ疑問だが、犯人の年齢や周辺情報からして、大方の論調は、上記のような内容になっている。

 ジョン・F・ケネディアメリカ大統領を狙撃したとして逮捕され、移送中に射殺された、リー・ハーヴェイ・オズワルドは、木村某と同じ24歳だった。オズワルドが誰かの模倣犯とかローンオフェンダーだったのではないことは、ケネディ大統領暗殺関係の書籍を少し触れるだけで明らかである。だったら、木村某が何も語っていない段階で、同じ年齢の木村某を模倣犯とかローンオフェンダーとか、どうして断定することができるのか。報道によると、木村某は、神戸地裁に提出した陳述書で、安倍元総理の国葬に反対する意見を述べている。彼に影響を与え、あるいは教唆した者の存在を否定することはできない。

 現段階で言えること、それは、我が国の法治国家としての根幹の部分が大きく揺らいでいるということだ。社会人経験のない24歳の男が、下手をすると、現職の総理を暗殺してしまうという現実が、リアリティをもって、我々国民に迫ってくる。あの手製という爆弾のような物でも、殺傷能力がないと誰がいえるのか。もしも、岸田首相が命を落とさないまでも、怪我をしていたら、どういうことになっていたのか、その可能性は高かったのではないのか。

 明治の元勲である、大隈重信は、1889年(明治22年)、玄洋社社員の来島恒喜が投じた爆弾で左足切断の重傷を負った。今回の事件も現象面では、この事件と同じである。但し、警護の体制が当時とは全く違うので、大事に至らなかっただけで、一歩間違えると大惨事になっていた可能性がある。模倣犯とかローンオフェンダーとか、そういう軽い言葉で済まされる事件ではないのだ。

 いずれにせよ、ネット社会が定着する中で、通常ならば、全く無辜で人生を全うするはずの人間が、安倍元総理の事件や今回の事件のように、とんでもないことをしでかす世の中になった。そして、政治家も命を賭けないと職務を遂行できない職業となった。本当に、殺伐として恐ろしい社会になったものだと思う。しかしながら、現実を直視しつつ、我々は、そういう時代に生きていることを自覚し、自分自身で縷々適正でバランスのとれた判断をしながら、大切な家族や友人達を守っていかなければならない。

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