兵庫県森連運営のチップ工場が、何故、自腹を切ってまでチップ材の原木を集荷したのか、それは、バイオマス発電所の稼働を止めてはいけないからである。しかし、悲しいかな、連合会とて、企業としては中小企業それも小企業の規模であり、自己資金などわずかしかなく、身銭を切ることなど本来「自殺行為」に等しい。当然、五者協議なので、協議会で善処策を検討することになる。もちろん、その前に、関西電力の子会社と交渉して、チップの単価を上げてもらうように交渉することが先だろう。
通常、山側と需要側での取引価格(単価)は、包括的な協定を結んでいる場合、3ヶ月に1回、市況や需給状況を踏まえて、相対で交渉し価格を改定することになっている。この場合も、チップ材の価格が上がってきたので、チップの買い取り単価も、相応に上げていくことになる。「ウッドショックで1.4倍になった」という報道があったが、それであれば、その分に見合うだけのチップ単価を関電側が引き上げるのが通常である。
しかし、結果的にチップ工場には原木やチップが集まらず、今般のギブアップとなったのだが、私からすると、そんな状態で、6年もよくやったなと感嘆するのだ。関西電力ほどの大企業のグループが、2,000円や3,000円の単価を上げて、例え6万tで、年間1億2,000万とか1億8,000万円であっても、バイオマス発電所側には、まだまだ余力があったはずだし、少しの赤字でも、とにかく大企業である。目くじらを立てるような金額ではない。
要は契約の内容であろう。その契約書の内容を私は知らないし、関わっていないのでここでは推察しかできない。いずれにしろ、一番肝心なプロセスのところを、一番経営基盤の脆弱な企業が担い、結果として、前のめりに倒れてしまった形になった。その結果が、「森林組合連合会から撤退との申し出があったので、五者契約は解消、バイオマス発電所は事業停止」ということになり、兵庫県森連だけが悪者にされた形の幕引きとなった。
昨年には、兵庫県知事が維新色の強い人物に代わり、県庁のトップ交代による方針転換も当然想定される。行政側も何とか存続させようと、あらゆる方策を講じたのだと思うが、結論は、くだんの通りだった。だから、最初に書いたように、兵庫県森連の事業戦略が甘く、6年しかもたなかったというのは事実にしろ、特に関西電力側が契約内容を見直して、チップ価格を引き上げていれば、命脈はつながり、そのうち、原木やチップ価格の相場も落ち着いて、事業を継続できた可能性は高い。いや、この事業は止めたらいけない事業ではないか。
この事業停止を皮切りに、全国のバイオマス発電所の事業停止ドミノが起こるかというとそんなことはない。海外から燃料を買ってきて、それを燃やして発電をするというような、本来の主旨から外れているようなバイオマス発電所は、最初から論外で、円安も手伝ってそれらはドミノ現象になるかもしれない。しかし、間伐材や未利用材の木質バイオマス発電は、国内に膨大な森林資源がある限り、まず、倒れることはない。但し、原材料が途切れずに供給できるという前提条件付きだが…。
4回連続で、一気呵成に書いたが、最後に一つ、ただの鉄の塊と化した、バイオマス発電施設とチップ工場を、「悪意のある外資」にだけは、絶対に渡してはならない。まともな国内の企業が買収すべきだし、そういう動きを水面下でしてきた結果が「事業停止」だったのだとしても、かつてのグリーンピアやハウステンボス・大阪のソーラー発電のようにしてはならない。亡国そのものだ。私に相応の資金があれば、そうしたいが、せめて、こんなちっぽけなブログを使って、私なりの「正しい」考え方、論調を誰かに知ってほしい。もっといえば、大資本家で、かつ「憂国の士」に伝わって欲しいと、祈るような気持ちで、これを書いた。きちんとした企業や企業連合、資本等の力で、この事業が早期に再開されることを切に願っている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。