数日前に、静岡市内の山林で起こった、不適正な森林伐採がワイド番組の特集で取り上げられ、ネットニュースでも話題になり、世間を騒がせた。私のところにも、このニュースをみて、複数の問い合わせがあった。地元の静岡新聞には、4月16日付で次のような記事が出ていた。https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1053943.html?news=1073631
この写真をみると、皆伐のようにみえるが、全体的には「帯状間伐」みたいな、でも間伐とはいえない乱伐である。それに、林齢が15年生程度ということで、ヒノキが細く、切り捨て間伐になっている。県民税の予算消化のために、手っ取り早く、列状に伐ったのか、とにかく、「大惨事」であることは間違いない。県民税の事業は、間伐遅れの林分を専ら整備する事業に遣われ、こういう無茶苦茶な事態とは真逆の設計・仕様になっているはずだ。
この不適正な森林伐採は、地元の静岡市森林組合が所有者から委託を受けた事業ということだ。通常、森林組合は、育林についてはプロフェッショナルで、特に組合員が所有する森林については、顧客ということで丁寧な施業をするものだ。そして、公的な事業や補助金を多く扱うことから、コンプライアンスの意識も高いと一般にはそう思われている。長年、森林組合の経営支援をして、信用第一で、いい仕事を積み重ねることが、森林組合の生きる道だと説いてきた私にしてみれば、今回のようなことは大いにショックであり、怒りをおぼえる。
今回のようなことをやってしまったら、これまで培ってきた信用とか信頼は地に落ちるのだ。長野県でも数年前に架空申請による補助金の不適正受給事件が起きて、当該森林組合のみならず、林業事業者全体に対する信用を毀損することになり、その後遺症はその後も続いた。今回、「また、森林組合か」と思った国民も多かったに違いない。
「所有者に対して損害賠償も検討している」と当該森林組合はコメントしているが、住宅であれば、建て替えればよいが、森林は間違った伐採をしてしまったら、二度と元には戻らないし、仮に皆伐をして再造林したとしても、元の姿に戻るには気の遠くなるような時間と労力、費用もかかる。やり直しがきかないのだ。だからこそ、原理原則に基づいた、より適正な施業を事業者は心がけて、その技術力を磨いていかなければならないのだ。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。