4年前から居住している、蓼科の別荘地はカラマツを中心に、アカマツや白樺、ナラなどが混交する森林の中にある。植林したカラマツは、切り株をみたところ、だいたい50年から55年生くらいである。こちらに来た際、自宅の近隣の森林をみて、かなり混み合っており、枯死した樹木がそのままになっていたり、倒れた木がかかり木になっていたりして、見た目にもよくなかったので、間伐の必要性を管理会社に指摘した。
それから2年経って、別荘地でも間伐の補助金が出るようになったとのことで、今年の春から路網を開設しながら、間伐施業が始まった。これはいいことだと思って喜んでいたところ、我が家の裏にある森林の間伐の様子をみて驚いた。リゾート地や別荘地というある意味特殊な事情を踏まえた間伐をしていないのだ。私は林業の実務者ではないが、全国の森林をみて歩き、それなりに勉強もして、普通の人よりは森林や林業のことを知っているつもりだ。何がいけないかというと、①劣勢木だけを専ら伐採していない。②山桜とかナラとか大事な広葉樹も切り倒している。③生産目的ではないのに、作業道の幅員が広すぎる。④林地残材を斜面に放置し、落下する危険があり、また景観的にも見苦しい。⑤将来、どんな森林にしていくのかという目標がみえない。等々である。あまりにひどいので、管理会社の責任者を呼んでもらい、上記のようなことを説明し、手直しを要望した。結果的に、責任者の人もこれらを理解して、林地残材の片付けなどの作業が実施されて、それなりの形にはなった。
観光地や別荘地における森林の価値は、いわゆる「「プライスレス」である。別荘の利用者は、その価値に対して管理費等の対価を支払っている。森林の多面的機能でいえば、「保健・文化機能(レクレーション機能)」がメインになり、防災機能、水源涵養機能などがその価値の構成要因となる。林産物生産機能などは、薪など少しはあるにしても殆ど無視してもいいと思う。ということは、その森林整備には、デザイン性が重視され、もっといえば、どんな森林にしていくのかという明確な思想なり哲学が必須になる。今回、私が指摘をしたことで、今後の間伐施業について、そういった方向で進めてもらえることを、一住人として期待をしているところだ。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。