「自分が正しいと信じることを明確に指摘していく」ことが、私自身のこの職業における行動規範だと確信して、日々の仕事に向き合っている。昨日も、その行動規範に従って、東京での関係先との面談、打ち合わせに臨んだ。経営コンサルタント(中小企業診断士)になって20年と半年、森林・林業に専門化してから早12年余り経った。我が国の「森林・林業の再生」という、遠大なテーマにも、志ある人たちと一緒に懸命に取り組んできた。
先週の、ある森林組合での経営診断報告会でも実感したのは、例えば、森林組合の理事・監事の人たちが、私の指摘や助言などを、真剣に聴いてくれるようになったのは、ここ数年のことではないかということだった。よく考えてみれば、40歳代後半から50歳代初めの頃、この業界における自分の仕事が急激に増えて、私はそれこそ夢中になって、全国各地の森林組合などの林業事業体に赴き、施業現場にも足を運び、経営や組織、事業運営などについて精一杯の助言をした。
その年齢で、助言をする相手の経営者は、60歳代後半から70歳代が多かった。森林組合の理事・監事もそういう年齢層が多い。一回り以上年上の「人生の先達」に向かって、私は経営の原則や自分自身の正論、持論などを述べていたのだが、彼らがそれを傾聴し、真摯に受け止めてくれていたのかということは、今から考えると、かなり怪しい部分がある。もちろん、そんな人も中にはいたとは思うが、やはり、彼らからすると、「若造が、生意気なことを言っている」ということで、ともすると「聞き流して」いたのかもしれないと思ったりする。
私の職業は、言葉でもって、相手に有用な助言をしていくものだ。だから、その言葉が相手の経営者に受容され、心の中に入っていかないことには、助言をしたことにならないのだ。いわゆる「言葉の上滑り」になる。自分の言葉を相手に受容してもらうためには、その言葉そのものが、記号として品質の高いものでなければならないし、言葉を発する本人の全人格的なものがそこに凝縮され、一種のオーラを放っていなければならないと考えている。
先週の報告会では、まさに、「情熱と厳しさと温情」が入り交じり、物事の軽重をつけながら、私なりに20年間余りの積み上げを体現した内容になったと思っている。「厳しさと優しさは背中合わせ」だし、その前提には、この業種を支援することに対する限りない情熱がなければならない。そういうことが、相手に本能的にしろ、伝わった時に、自身の発する言葉が受容されるのだ。但し、その営みに終わりはない。自分自身の使命、役割の最終章に向かって、今日も明日も、来週も、1つ1つの案件や事象に対して真摯に向き合っていきたいと考えている。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。