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定年からが長いという重い事実

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このコラムは、2004年に、私が運営していた「ビジネスマンバイブル」というサイトの記事として書いたものです。
 平均寿命が延びて、多くの人が80歳代まで生きる社会になっている。企業に勤めて60歳で定年になっても、それからまだ20年もあるのだ。年金をもらっているので、さぞかし気楽だと思うのだが、当事者はそうでもないらしい。「何もすることがなくて困る」という定年族が激増しているという。団塊の世代が大挙して定年になる2007年以降は、こういった人たちが増えてどうしようもなくなるのではないか。
 
 定年になっても、他の企業や団体から「是非、来てくれないか」と声のかかる人は幸せである。そういう人は、現職時代から、個人的にも時間や労力を割いて人の世話をした人であろう。人間、看板を失うと本当に何もできないものである。特に大企業にずっといたというような人にその傾向が強い。再就職といっても、以前の看板やプライドが邪魔をして(本人だけの問題ではなく)意欲があっても仕事がないというケースが実に多いのである。

 それに定年になって、夫婦仲良くというのも稀なケースだ。大抵は家にいるのを嫌がられたり、一緒に行動したくないと奥さんから宣言される。かといって、愛人を作るような元気も甲斐性もなく、本当に行くところがないのだ。
行政機関や大学、団体などが主催する無料のセミナーに来ている受講者の9割は、こういった行き場のない元ビジネスマンだそうだ。平日の昼間に無料で夏場なんかだと冷房がきいて、下手をすれば交流会と称して軽食なんかが出る場合もある。食事はオーバーにしてもただで話が聞けて時間がつぶせるということで、暇なオッサンたちが申し込みに殺到するのだ。その結果、本当にその話を聞きたい現役の人たちがはじかれてしまうことになる。

 仕事がなければ、自分で起業すればいいという意見もあるが、企業に40年近くどっぷりといると、そんなことはまず不可能に近い。ある人はこういった。「彼らには発想力がないんだよ」。確かにそうであろう。彼らにあるのは、大企業にして部長をしたという「市場価値の希薄なプライド」だけなのだ。だから、中高年の起業で成功する確率は、1割以下だといわれるのだ。

 仕事がなく、家族からも阻害されて送る20年間は、気が遠くなるくらい長い時間であろう。しかしながら、その20年間というものは、彼が50年以上、勉強し働き続けてきた恩賞みたいなもので、本来であれば、人生の中で最も充実する珠玉の時間になるはずなのだ。

 先日、あるテレビ局を定年退職した管理職がいて、これから猛勉強して中小企業診断士と社会保険労務士の資格を取得するという。それはそれで結構なことだと思うのだが、資格をとっても、そこから前進することはまずないだろうと思う。だいたい、企業数が減り続けているのに、税理士とか診断士とか社労士とかは増え続けているのだ。それに、無資格のコンサルタントなど掃いて捨てるほどいる。すでにハングリー精神を失った定年退職者に、有料の仕事が回ってくるほどこの業界は甘くはない。

 そうかと思うと、こちらからは一切働きかけもしないのに、定年後も次から次へと仕事やポストが回ってくる人もいる。やはり人間の資質の違いかと思ったりする。実際、現場でがんばっている人と定年後、くすぶっている人は同年齢でも見掛けがぜんぜん違う。そういうことを考えると、たとえボランティアでも、社会や他人から頼られる存在になるということは重要なことだと思う。

『世事俯瞰2004年8月10日』 ビジネスマンバイブルより

 

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