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若いときの苦労は買ってでもしろは、もはや死語か

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 年末年始が9連休になり、長い休みの後に、会社に行くのが嫌になり、退職するサラリーマンが激増しているという報道があった。ある退職代行会社には、1日で254件の依頼があったとのことだ。そもそも、退職代行会社が存在して、そこに相当のニーズがあるということ自体、私には信じがたい現象なのだが、それも時代の流れなのだろうと、無理矢理、納得したりしている。そして、ため息交じりに浮かんでくるのが、冒頭の「若いときの苦労は、買ってでもしろ」という言葉である。

 「自分の若い頃はこうだった」と若い人たちに、したり顔で上から目線で講釈を垂れるようなオジさんには決してなりたくない。そういう人間に限って、社会人として、またビジネスマンとして大した事跡を残していない。「俺ほど苦労した人間はそういない」などと自分に酔ったように宣うリタイア族がよくいるが、その顔相や語り口から、それなりの風格とか含蓄といったものが伝わってくることはまずない。「このオッサンは、ただ、確たる理念やポリシーを持たないまま、漫然とサラリーマン人生を送った人なのだな」と思いつつ、「いろいろとご苦労されたのですね」と話を合わせたりする。

 結論から言うと、本当に苦労をした人は、「自分は苦労した」とまず口にしないものだ。だから、冒頭の言葉は、誰が言ったものなのか、その由来が不明なのだ。もっというと、「その人が苦労した」というのは、複数の他者がその人物の去就をみていて、客観的にみて「あの人はいろいろと苦労して、今があるのだろう」等と評価して初めて、その人が苦労人ということになるのだと私は考えている。実際、私自身、「坪野さんも、これまでいろいろとご苦労されたのですね」と、半ば追従も含めて他人から言われることがあって、どう返していいかわからず、苦笑あるいは恐縮しながら「自分の未熟さ故に、悪戦苦闘はしてきましたが…」と言葉を濁すことが多いのだ。

 前置きが長くなったが、くだんのニュースである。「今の若者は忍耐が足りない」とか「社会に甘えている」などと、それこそ上から目線で論評するつもりもないし、また、「今の若い人の気持ちは痛いほどわかる」「ストレス社会は生きづらいね」などと、彼らに迎合するつもりもさらさらない。どんな時代でも、自らの人生観・価値観を堅持しながら、ルールを守りつつ仕事に向き合っている人が多数いる。斜に構えながらも、家族のために「自らが妥協する範囲を定めながら」その範囲内で懸命に働いている人も多いだろう。

 どういう動機づけにしろ、人間は「労働する」「働く」ことで、社会の「正なる構成員」として位置づけられ、そこで得られるものは、日々の糧(給与等)を主として、自己の存在証明、承認欲求、達成感に至り、果ては「自己実現の欲求」に連なっていく。その対象となる職業は、その人が納得して就労しているのであれば何でもいいのだ。淡々とその職業を遂行し、自分が最も愉しむことができる趣味を持ち、社会に迷惑をかけずに生きていけるのであれば、その人の人生は少なくとも幸福であるといえる。

 作家の故藤本義一氏(1933~2012)は、その著書の中で「男の顔は領収書」と書いている。人にはさまざまな人生がある。そのプロセスの断面で、その人の人生が幸福だったか不幸だったか、充実していたかそうでなかったかと判別することはできない。一定期間の過ぎた、例えば、仕事を引退した時に、その人がどういう「佇まい」になっているかで、ある程度のことが云えるのではないかと私は思っている。平たく言うと「いい顔をしているかどうか」である。本題に戻れば、「いい顔をしている」時が来るのであれば、何回でも転職すればいいし、サラリーマンをやめて独立自営するのもいい。後から振り返った時に、自分自身が納得できる人生であれば、それに越したことはないということになる。

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