私が居住する、東急リゾートタウン蓼科には、別荘としての山荘が約800戸、マンションタイプのヴィラが約1400世帯、合わせて約2,200世帯あり、殆どは、GWから秋にかけての利用者の所有となっている。我が家は、1割にも満たない定住者である。別荘は、原則、土地を定期借地して、上モノが自己所有となっている。今年、一戸建ての山荘の多くが、借地権の更新を迎えるということで、所有者の高齢化もあり、更新をせずに山荘を解体して原状復帰する物件が目立っている。
私が居住する街区でも、写真のように、借地権を更新せず、所有者の負担で建物を解体する現場がいくつかある。この山荘などは、見た目で築30年程度、まだまだ利用できる感じだったのだが、最近、解体業者が来て、あっという間に解体作業をしてしまった。建物が斜面にあるので、そこまで重機を上げるために、道路から粗い重機道を支障木を伐採しながら開設しており、コンクリートの基礎部分は、工事の都合か搬出していない。見た目にはあまりよくない光景である。
この山荘の所有者は、関東の人だったと思う。時々は、利用していたようだが、おそらく後継者がいなかったものと思われる。別荘を持つことがステイタスで、別荘に憧れを抱く世代は、私の年代が最後くらいだろう。また、企業が福利厚生目的で保有し、社員や家族が利用する「保養所」のための別荘も、もはや時代に合わず、ここだけではなく、他の別荘地でも、撤退が相次いでいる。そういった時代の変遷を踏まえて、別荘地というものを、今後、どう維持していくか、あるいは、再構築していくかということが、当リゾートタウンのみならず、全国の同じような別荘地の喫緊の課題となっている。
親が購入した山荘やヴィラは、基本的に、その子息が相続して利用することが望ましい。しかしながら、親の世代が80代として、息子や娘の世代が50代、そういう世代以下の年代は、余暇を過ごすのに、別荘といった定点ではなく、海外も含めていろいろなところに出かけて楽しむというライフスタイルを選択するものだと思う。価値観が親の世代とはまるで違うのだ。まして、そういう世代が、自腹を切って、山荘やヴィラを購入し、東京などからの交通費や維持費などをかけて、そこを利用するなど、現実的にはなかなか考えにくいところがある。
それでも、親から相続をして、その子息が週末などに家族で来訪し、森の中の生活を楽しむという向きは、少ないがまだある。そこはしっかりと担保しながら、親子以外の世代交代というものを、どうやって実現するのかというところに、別荘地の命運がかかっている。そこで、都会からの移住という選択肢が浮上するが、これには、現地で仕事があるという条件がまずついてまわる。リモートワークが浸透したといっても、そのパイは小さく、多くの人は、この地域での仕事を求めることになり、現状では供給側のキャパがあまりに脆弱である。
ここは、まだ、東急不動産を核にした、東急グループが管理・運営をしており、各種の管理サービスも一定以上のグレードを維持している。すでに、管理会社が倒産したりして、別荘オーナーの自主管理になって、半ば廃墟化している別荘地も多いようだ。リゾート地、そしてその地域の魅力づくり、とても難しいテーマではあるが、せっかく多額の投資をして開発された、貴重な資産でもあり、また、地域の行政にとっては、税源としても大きな存在となっている。私は一別荘オーナーに過ぎないが、写真のような光景をみていると、自分も含めて、関係者が叡智を結集し、行動して、こういったリゾート地の再生に向けた取り組みを進めていくことが重要と、つくづく思うのだ。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。