「選択」12月号に、「中国が欧州各地で森林強奪」という記事が掲載されている。「森林の違法伐採が深刻化している。気が付いたら、森林がごっそり、まるごと消えていたという事件が頻発している。背後に中国の業者がいるのは間違いない」と在大手紙記者が言っているとのこと。フランス産の樫は、中国で評判がよく、摘発されるのはほんの一部だ」ということで、さらに、ドイツやオーストリアでも、樫の違法伐採が進んでいるとこの記事が伝えている。
環境団体「世界自然保護基金(WWF)」の調査では、ドイツ当局が監査に入るのは、年間でせいぜい業者の1%程度で監査になっていない」とのこと。私は、15年ほど前に、ドイツとオーストリアに複数回視察に行き、現地のフォレスターらからいろいろと話を聴いたが、その際に感銘を受けたのが、フォレスター(州政府森林官)は、強大な権限を持ち、その地域の森林管理や木材生産を一手に管理しており、盗伐とか違法伐採などが起こる余地はないということだった。
少なくとも、私には「ドイツやオーストリアの森林管理のやり方」は、理想的に映ったし、その後、我が国でも、その手法を部分的にしろ導入して、森林経営計画制度などが施行された。その林業先進国のドイツやオーストリアで、中国による違法伐採が進められ、貴重な森林資源が収奪されているという。伐採しているのは、現地の事業者で、中国に使嗾されているにせよ、あれほど完璧に、あるいは厳格に森林管理をしていたはずのドイツやオーストリアで、そんなことが起こっているというのは、私には信じがたい事象だ。
アフリカでは、高級家具に使う「紫檀」が収奪されているという。 カンボジア、ラオス、タイ、マダガスカルでも違法に伐採され 、社会問題になっているという。ロシアにおける違法伐採も周知のところだ。中国発の「違法伐採」が世界中に拡散している、この事象を我々は、もっと深刻に受け止めなければならない。ビジネスとして、国産材のスギや・ヒノキを中国に輸出することに異を唱えるものではないが、その前にもっとやるべきことがあるのではないかと考えるのは私だけではあるまい。
株式会社フォレスト・ミッション 代表取締役、林業経営コンサルタント、経済産業大臣登録・中小企業診断士
我が国における林業経営コンサルティングを構築した第一人者であり、これまで460超の林業事業体の経営コンサルティングに携わる。2015年から、活動拠点を東京から信州・蓼科に移して活動中。