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ウッドショックは山側に利益をもたらしているのか

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 2年間に及んだ、コロナ禍がウッドショックなる現象をもたらし、森林・林業界にもさまざまな影響が及んでいる。最近の状況を関係者に聴くと、例えば、搬出間伐では、木材価格の上昇で、森林所有者に対する精算金が見積もり段階の5倍とか場合によっては10倍になったとかで、木材を伐って出した森林所有者には大きな利益がもたらされたということだ。これまでなら、森林経営計画を樹立している団地の5ha以上の搬出間伐で、森林所有者には、ヘクタールあたり、だいたい20万円くらい返してきたものが、ウッドショックでその5倍としても100万円の還元をしているという。

 ある地域では、スギ丸太の価格が従来の3割高になり、ヒノキだと2万円/m3を超えているという。B材といわれる合板材も単価が上がり、バイオマス発電等の燃料に使うチップ材(CD材)も、基本的に原料が足りなくなっていることから有利な価格で推移しているという。こういった場合は、手っ取り早く、山買いをした上で皆伐し、高く買ってくれるところに売り払うことで、事業体は通常よりも大きな利益をあげることができる。そうやって儲かっているところは、「うちは儲かっている」とはまず言わずに、黙々と儲かる事業地を探して、片っ端から皆伐することになる。そして、お決まりのように、再造林はせずに放置する。

 大面積皆伐ではなく、森林経営計画地内の小面積皆伐(1haか2ha程度以内)で、その後にスギとかヒノキなどを再造林する事業体は、まともだが、中には、立木だけでなく「底地買い」といって、山を丸ごと買って、立木を皆伐し、あとは放置するという事業体がいて、彼らが、大面積皆伐をやって、後は野となれ山となれということで、はげ山のまま放置するのだ。立木買いであれば、山自体の所有者は変わらないので、その所有者が再造林をしてくれる可能性はあるが、元々金儲けが目的の事業体が所有者になってしまうと、まず、未植栽地になってしまうのは必定である。しかも、森林経営計画が樹立されていない森林だと、それを止めることもできない。ウッドショックで、そういった環境破壊と同義の大面積皆伐→未植栽地が増えている

 それでは、ウッドショックなる現象で、一時的にしろ、木材価格が高騰している中で、山側に利益がもたらされているのかということを検証してみたい。まず、森林所有者、所有する森林の立木や山ごと売れば、一時期よりも立木価格が上がっている分、手取額は増えるはずである。また、森林組合などに搬出間伐を委託すれば、搬出費用はそれほど上がっていないので、木材価格の上昇分が手取額の増額となる。但し、森林組合や民間事業体にも、年間、搬出間伐をやるキャパシティがあるので、恩恵を受けるのは、この時期に施業をしてもらった森林所有者に限られることになる。

 さらに、事実上の森林整備・管理の担い手となっている林業事業体であるが、森林組合については、皆伐については、森林経営計画地内で、伐期になった林分に限られ、それも小面積皆伐で、そこから大量に木材が出てくることはない。それに、皆伐は取り組まないという森林組合も多い。搬出間伐の場合は、木材売上と搬出費用に対する手数料が、森林組合の収益となり、それも10%以内のものが多いので、大した収益にはならない。先述のように、森林所有者にたくさんの収益還元が実行されて、喜んでいるのは彼らであろう。

 民間事業体については、自ら大面積の山や立木を買って、人と重機と投入し、いわば力任せに皆伐をやっているところは、荒稼ぎをしているようだ。むしろ、稼げる時に稼いでおくというスタンスで、刹那的に、あるいは無定見にやっている感じがする。国有林や県有林などの請負を中心としているところや、個人の山から委託を受けて、森林整備などをしている民間事業体は、労働力不足もあって、目の前に事業があっても、必要とする事業量をこなしきれないという問題も横たわっている。

 一部の製材業は、安く木材を仕入れておけば、かなりの儲けを確保することができるが、資本力のない中小の加工業者はそうもいかない。山側においては、先述のように、一部の森林所有者の懐が潤った程度、そして、持続可能な森林管理を無視して自分だけ儲かれば良いという事業体が多くの利益を得ているのが実態である。全体のことを考え、こつこつと真面目に林業に取り組む事業体には、その努力に見合う利益がいかず、別のところに収奪されている、ウッドショックなど、なかった方が良かったと思うのは、私だけではあるまい。

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