フォレスト・ミッションBLOG

林業の産業としての自立、そして林業に従事する人たちが誇りを持てるように、私たちは、自らが信じる、森林・林業のあるべき姿を、林業関係者の皆様と一緒に創造していきます。

未分類

目先の現象に翻弄されないこと

投稿日:

 外材の高騰に伴い、国産材の価格も上がり、おまけに品薄になっている。しかし、私見だが、「実需増なき価格向上」に、林業側は、翻弄されるべきではないと思っている。こういう時こそ、「山は貯金箱」、「森林を育て守ることが林業の本分」という定理を、林業関係者は胸に刻むべきである。その上で、高く買ってくれる原木は、体力の範囲で、適材・適量を販売していけばいい。

 

 現下の状況をみて、「国産材の時代が来る」などと、期待する向きもあるが、そもそも、外材の流入具合と、国産材の生産を天秤にかけて計ることが間違っていると私は考えている。戦後、不幸にして、持続可能な林業を面的にできなかった間隙を、米国に円高を仕掛けられ、その結果、国内マーケットを外材に席巻されてしまった、林業にとって「取り返しのつかない」苦い経験を思い起こすべきだ。

 幸いにも、スギやヒノキ、カラマツなどを、需要側が高値で買ってくれるのであれば、有り難くそれを享受し、確保した利益・留保金は、森林情報の取得や境界明確化、人材確保・育成・待遇改善、設備投資、路網整備などの、いわゆる基盤整備に遣っていくべきである。つまりは、林業側として、「足腰を強くすること」を優先するべきである。それは、山側としての経営戦略でもある。

 今一度、林業界の泰斗である藤森隆郎先生が、ずっと仰っていた「持続可能な森林管理=林業」というものを、我々はきちんと理解し、実践していかなければならない。そして、地域の事情に適合した林業を胸を張って追求していくことだ。木材生産は、外部からの収益を獲得する貴重な事業ではあるが、あくまで「持続可能な森林管理」の範囲内で実行していくのが原則だ。

 いずれにしても、現下の状況が一定期間続けば、貴重な原木を生産・供給する林業側の相対的地位が向上する。これは、とてもいいことだと思う。慢性的・構造的な労働力不足や私有林における森林所有者の経営意欲減退にも、正面から向き合える機会かもしれない。「国産材の時代到来」と浮かれることよりも、積年の課題を少しでも改善できるチャンスだと認識して、しかるべき行動に出ることで、林業側が少しでも元気になり、足腰を強くしながら振興していくことを願わずにいられない。

-未分類

関連記事

別荘地における森林整備のあり方、その後の状況

 昨年8月2日に、このページで、現在居住している、信州蓼科の別荘地における森林整備について言及した。当初、原理原則に外れた施業をしていたので、管理会社に対して、エビデンスを示しながら強く抗議をしたとこ …

no image

若きチャレンジャーに幸あれ

 大手居酒屋チェーンのワタミグループの関連林業会社で、森林施業プランナーとして、大分県において森林整備や管理をしていた若者が、このたび、新会社を設立し、森林管理や整備専門の林業会社として活動を始めるこ …

森林と共に過ごす時間が大事

 ここ蓼科は、朝晩の気温が下がり、未明には氷点下になって、いよいよ本格的な冬に向かって季節が進んでいる。和歌山県生まれの私は、正直なところ寒い冬は苦手で、この季節はできれば温暖なところで過ごしたいと思 …

宮崎→東京、独りの時間も多く

 日曜日の早朝に自宅を出て、羽田空港→宮崎空港、そこから、事業の事務局の人たちとレンタカーで延岡まで走り、その日は当地で宿泊、翌朝、日向で「架線式グラップル」の稼働現場を視察した。架線式グラップルは、 …

安倍元首相暗殺事件、文春砲始まる

 昨年7月8日に起こった、安倍元首相の暗殺事件について、その後、大手メディアが沈黙を続ける中、週刊文春の2月16日号が、特集を組んだとのことで、早速コンビニに行き、貪るように読んだ。「疑惑の銃弾」と銘 …