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新たな時代の価値観に向けて

投稿日:2019年12月23日 更新日:

 ゴルフクラブのヒットシリーズである「XXIO」(ダンロップエンタープライズ)の新商品のコピーに次のようなものがあった。「時代は変わった。仕事中心から、自分の時間優先へ。付き合い重視から、自分に心地よい絆優先へ。いま、世の中は、ライフスタイルをどのようにデザインし、いかに豊かで充実したものにするか、という方向に舵を切っている・・・」というものだ。ゴルフクラブの広告コピーといいながら、なかなか味わいのあるフレーズだと感銘を受けた。

  確かに、時代は変わりつつある。私の実感でいえば、1980年代後半から90年代にかけてのバブル経済までは、「仕事優先の時代」だったことは間違いない。個人の都合を優先しようとする者は、往々にして「白い目でみられた」し、会社が儲かることが、そこにいる個人の生活を豊かにするものだという気持ちも強かった。それが、バブル経済崩壊やそれに連なる企業人としての蹉跌によって、いわゆる「神話」が崩壊し、そこから、約30年間に亘って、我々は仕事における価値観というものを改めて探索する長い旅路を彷徨っていたともいえる。

 「仕事中心から、自分の時間優先へ」というフレーズは、そういった彷徨いの果ての一つの結論なのだろう。私の世代のような、まだ、「仕事優先の価値観」を引き摺っている人間は、そう簡単に割り切れないが、私よりも若い世代のビジネスパーソン達は、すでに、そこをクリアして、新たな価値観を希求する旅をしているのだ。「付き合い重視から、自分に心地よい絆優先へ」という考え方は、それを如実に表現しているものと受け取れる。このところの世の中の動静も、そんなことを基軸にして捉えると、よくみえてくるものがある。

 翻って、自分が長年に亘って関わっている、森林・林業の世界を俯瞰するとどうなるのか。「植えて、育てて、伐って(売って)、また植えて育てる」という一連の営みは、ビジネスモデルとしては、すでに成立しえないものになっている。それよりも、「今、目の前にある森林(特に人工林)を、いかにしてお金に換えていくのか、そして、その後をどう持続させていくのか」ということに、多くの関係者の関心は移っている。その時間軸の取り方で、「長伐期施業」を取りあえず選択したり、主伐・再造林という方向性もある。

 「持続可能な森林管理」という永遠ともいえる極めて重要なテーマを、我々も含めた、この国に暮らす国民の全てが真剣に考えていかなければならない時代に入っている。川上から川中、川下まで、それぞれの立場や役割の中で、このテーマを追求していくべきだろう。特に川上=林業側については、一定の条件(自然現象、木材需要・価格、補助金等)のもとで、仕事中心から自分の時間中心、自身のライフスタイルをこの業の中で描いて、それを充実させていくという価値観に舵を切っていくことが大事だ。ビジネスの視点だけで、森林・林業を捉えてしまうと、どうしても堂々巡りになり、前を向けなくなりがちである。それを上回って余りある価値観というものが、我々には必要ではないかと思ったりする。

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