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千葉県の大規模停電とスギの倒木について思うこと

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 千葉県では、台風15号で南部を中心に大規模停電が続いている。ライフラインの中でも、電気は特に重要である。私自身も、昨年秋に台風による停電で、1日半ほど電気なしの生活を強いられたが、たった1日半でも大変な思いをした。千葉県の人たちは、停電になってからもう9日になるので、いろいろな面で死活問題になりつつあると思う。本当に気の毒である。

 大型台風でなぎ倒されたスギなどの樹木が、そこら中の電線をぶった切って大規模な停電になったというのが、ニュース等でも報道されている。今朝のニュースでも千葉大学園芸学部の教授が、「サンブ杉が溝腐れ病で倒れやすくなっていたところに大型台風が来て倒れた」「これまで森林整備をしていなかったつけがまわってきた」と言っていた。確かにそうだ。当職も千葉県では、3年前から森林施業プランナー研修や現場技能者研修などをやっていて、その際に、君津市などの山林に現場実習で入ることが多い。

 昨年度の実習地は、木更津市内の住宅地に近い森林で、現チーム・フォレストミッションの内田健一さんと浦部秀一郎さんに講師になっていただき、内田さんには、林分調査と間伐方針の研修、浦部さんには、森林作業道の踏査を実習を 合わせて半日間実施した。私もそこで一緒に歩いたり議論したりしたのだが、その合間をみて、その森林(4ヘクタール程度だったと記憶しているが)全体をみて歩いた。ざっとみたところ、植林して45年か50年くらい、1回程度切り捨て間伐をやったくらいの林分だった。

        木更津市内のスギの森林 2019年1月 坪野撮影

 写真でもわかるだろうか。明らかに溝腐れ病にやられているスギが目立つ。内田さんは、「この森林は、放っておけば強風で倒れて森林崩壊する可能性がある」と喝破していた。手で押しただけで、ボキッと倒れるようなスギも放置されていた。これまで整備をしていないのだから、仕方がないにしても、今回のようなことが起こってしまうとただ事ではない。「倒れるのをわかっていて放置していたのか」と林業側が責めを受けることになってしまう。

 大規模停電の主要因が、サンブ杉の倒木によるものだと世間が騒ぎ出しているので、これはすなわち、「林業悪者論」につながる。「たくさんの補助金を受給しているのに、肝心のことをしていなかったからこうなった。」いわゆる「人災」であるという論調だ。樹種転換も含めて、おそらくは抜本的な方策を講じないと、今回の件は簡単には収まらないだろう。

 今朝、東京に向かう前に、湯浅勲さんと、この件についても電話で話をした。我々のミッションとして、「あるべき林業」の姿を明確に示して、地域で林業を実践する関係者に対して、そこに向かう考え方なり手法なりを提言し、彼らがよりより林業を実践してビジネスとしてもしっかりと持続していけるようにサポートするというものがある。そのための人材育成、事業体育成、経営支援等々が手段としてある。このままでは、我が国の森林・林業が危ない・・・そういう危機意識を常にもちつつ、原理原則に基づき、そして英知を結集し、懸命の努力を積み重ねたその向こうに「あるべき林業」の姿がみえてくるのだと、それを全力でサポートしていくのが、チーム・フォレストミッションなのだとつくづく思っているところだ。

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